の会話劇のおすすめポイント
・金縛りで見た二人の謎の存在。その正体を科学と哲学の視点から推理する考察型ストーリー。
・「時間の流れ」「未来」「運命」をテーマにした、完全オリジナルのSF・ファンタジー会話劇。
・最後のどんでん返しで、思わずもう一度見返したくなる余韻のある結末。
登場人物
アン(科学担当)
冷静で論理的な秀才。レンの体験を一つずつ分析し、科学的な視点から謎に挑む。
レン(哲学担当)
感受性が豊かで好奇心旺盛。「なぜ?」を問い続ける性格で、不思議な体験の意味を探し続ける。
※この物語は完全オリジナルのSF・ファンタジー作品です。
レン
「アン!! 今、幽霊を見た!」
アン
「いきなり凄い話だね。落ち着いて、最初から全部話して。」
レン
「寝てたら急に目が覚めたんだ。でも体が全然動かない。金縛りだと思った瞬間、部屋の隅に二人立ってた。白い旅装を着て、体は青白く透けてて、頭には白い三角の冠を付けてた。そして二人とも、ものすごい速さでお辞儀を繰り返してたんだ。」
アン
「お姉ちゃんに向かって?」
レン
「最初はそう思った。でも違った。よく見たら僕じゃない。僕の少し後ろを見ながら、何度も何度も頭を下げてた。怖くなって必死に金縛りを解いて立ち上がったけど、それでも消えない。部屋の明かりを付けた瞬間、二人は煙みたいに消えた。」
アン
「なるほど。お姉ちゃんの話には五つの共通点がある。白い旅装、青白い姿、三角の冠、高速のお辞儀、そしてお姉ちゃんじゃなく後ろを見ていたこと。この五つは全部つながってる。」
レン
「もう何か分かったの?」
アン
「まず気になったのは、二人の服装。」
レン
「白い旅装と三角の冠?」
アン
「そう。この物語の世界では、あれは人生を終えて旅の途中にいる者だけが身にまとう正装だと私は考える。」
レン
「つまり、あの二人は旅人。」
アン
「そう・・そして次は、お辞儀の速さ。」
レン
「ものすごい速さだった。」
アン
「そして無くなった者のあの世界はこちらの世界より高速で時が流れてると言われてるの。例えば、この世界で一秒しか経っていない間に、向こうの世界では十秒経っていたらどうなる?」
レン
「向こうの人は普通に歩いているだけなのに、僕たちには十倍速で動いて見える。」
アン
「その通り。だから二人は異常に速く動いていたんじゃない。」
アン
「旅人がいた世界は、この世界より時間の流れが速かった。」
レン
「だから普通のお辞儀が、高速に見えたんだ。」
アン
「そう。そして、もう一つ確認したい。お姉ちゃん、その二人の顔を思い出せる?」
レン
「顔?」
アン
「うん。よく思い出して。」レンは目を閉じる。しばらく沈黙が続く。
レン
「……あ。」
アン
「思い出した?」
レン
「最初は知らない人だと思ってた。でも違う 見覚えがある。
アン
「誰?」
レン
「……僕たちに似てた。僕とアンだ。」
アン
「そう・・・ 今の一言で、一つの仮説につながった。」
レン
「仮説?」
アン
「私はさっき、二人は私たちとは時間の流れが違う世界にいたと言った。」
レン
「うん。」
アン
「もし時間の流れが違う世界が本当に存在するなら、その世界では『過去・現在・未来』の境界も、私たちとは違うかもしれない。」
レン
「つまり?」
アン
「未来の存在が、今この瞬間の私たちを観測できても不思議じゃない。」
レン
「でも、どうして僕の部屋だったんだ?」
アン
「二人は、この家へ帰ってきた。」
レン
「帰ってきた……。」
アン
「未来の私たちなら、この家も、お姉ちゃんの部屋も知っている。」
アン
「だから、この場所へ現れたこと自体が、未来の私たちだった可能性を示している。」
レン
「つまり、あの二人は未来の僕たち。」
アン
「この物語の世界では、その仮説が一番筋の通る答えになる。」
レン
「待って……それって。」
レン
「つまり僕たちは、二人同時に亡くなるってことなのか?」
アン
「この仮説が正しいなら、そういう未来が待っている可能性がある。」
レン
「僕たちは、どんな最期を迎えるんだ?」
アン
「そこまでは分からない。未来の二人は結末を伝えに来たんじゃない。未来を変えるきっかけを残しに来たんだと思う。」
レン
「でも、どうして僕の後ろに向かってお辞儀してたんだ?」
アン
「そこが最後の謎。そして一番大事な答え。」
アン
「この物語の世界では、人生を終えた者は極楽浄土に行くため七人の審判者の前を順番に旅する言い伝えがある。その二人は、お姉ちゃんじゃなく、お姉ちゃんの後ろに立っていた七人の審判者の一人へ頭を下げていた。」
レン
「じゃあ僕には見えなかっただけで、後ろには審判者がいた。」
アン
「そう考えれば全部説明できる。未来の私たちは、その審判者に何度も敬意を示していたんじゃない。」
レン
「違うの?」
アン
「お願いしていたんだよ。」
レン
「お願い?」
アン
「『どうか一度だけ、過去の私たちへ未来を伝える機会をください。』その願いをかなえるために、何度も何度も頭を下げていた。」
レン
「だから、あんな必死だったのか。」
アン
「そして、その願いは一度だけ認められた。でも未来を言葉で教えることは許されない。だから未来の私たちは、姿だけを見せた。」
レン
「だから何も話さなかった。」
アン
「話せなかったんだよ。」
レン
「でも、どうして僕だけ見えたんだ?」
アン
「お姉ちゃんは昔から、人が気付かない違和感に敏感だった。この物語では、その感覚が未来と現在を一瞬だけつないだ。だから境界が開いた瞬間、お姉ちゃんだけが未来の私たちを見た。」
レン
「つまり、あれは未来の僕たちが送った警告。」
アン
「私はそう考える。」
レン
「アン。」
アン
「なに?」
レン
「未来って、本当に変えられるのかな。」
アン
「……分からない。」
レン
「え?」
アン
「もしかしたら。」
アン
「未来の私たちも、この会話をしたのかもしれない。」
レン
「つまり……。」
アン
「警告を受け、未来を変えようと決意した。」
アン
「それでも同じ未来にたどり着き、再び過去の自分たちへ警告を送った。」
レン
「終わらない……。」
アン
「運命のループだね。」
しばらく沈黙が流れる。
レン
「アン。」
アン
「なに?」
レン
「僕たち……。」
レン
「本当に、まだ生きてるよね?」
アンは答えなかった。
もし今夜、旅人があなたに向かってお辞儀をしていたら、その意味をあなたはどう考えますか。
