おすすめポイント
・科学×哲学の掛け合いで「難しいテーマ」をわかりやすく理解できる
・クラークの法則やフェルミ推定など知的好奇心を刺激する内容
・テンポの良い会話劇でエンタメとしても楽しめる構成
登場人物
・レン(18歳)
ミステリアスで不思議な哲学担当。勉強は苦手だが本質を突く問いを投げかけるタイプ。常識を疑い、物事の「意味」を追求する。
・アン(14歳)
天才で科学担当の妹。論理とデータを重視し、あらゆる現象を合理的に説明する。ツンデレ気質だが姉思いで、鋭いツッコミ役。
スマホは現代の魔法?
レン「なあアン、スマホって“魔法の鏡”に見えないか?」
アン「見えない。電磁波と半導体と通信プロトコルの集合体」
レン「昔の人が見たらどうだ?」
アン「そりゃ“遠くの人と話せる鏡”って思うでしょうね」
レン「つまり科学は、昔の魔法を実現している」
レン「SF作家アーサー・C・クラークはこう言った。“十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかないと”」
アン「はいはい、有名なクラークの法則ね。でもそれは“無知な側から見たら”って話でしょ?」
レン「では問おう。無知であることは、そんなに価値が低いのか?」
アン「低いというより、不正確。科学は正確に理解するためのものだから」
レン「だが人は理解した瞬間、それを“当たり前”に変える」
アン「それは慣れよ」
レン「では“なぜ電気は流れる?”」
アン「電気が流れる理由はこう。電池や発電機が電位差=電気の高さの差を作ると、そこに電圧という押す力が生まれるの。その力で導線の中の電子は低い電位から高い電位へ動く。その電子の流れが電気を流す法則なの」
レン「では“なぜその法則が存在する?”」
アン「……それは、宇宙の基本法則だから」
レン「説明が一段下がったな。“なぜそうなっているか”は答えていないつまり最終的には“そういうものだ”に行き着く」
アン「それは前提条件。科学の外側」
レン「そこに魔法が残る」
アン「未解明って言いなさい」
レン「言葉の問題だ。だが体験は変わらない」
アン「どういうこと」
レン「現代人の多くはスマホの仕組みを理解しているか?」
アン「してない人の方が圧倒的に多い」
アン「フェルミ推定で考えると、スマホの全工程……設計から製造、通信プロトコルまで完全に理解している人なんて、世界に0.001%もいないはず。でも残りの99.9%以上は、魔法の恩恵だけを受けてる」
レン「理解せずに使い、結果だけ得る。それは何だ?」
アン「……ブラックボックス化した技術」
レン「中身が分からず奇跡を起こす。それは魔法と何が違う?」
アン「理論があるかどうか。でも利用者目線だと差は薄い」
レン「つまり現代人は、無意識に魔法を使っている」
アン「言い方は極端だけど、否定はできない」
レン「科学とは、魔法を“誰でも使える形”にしたものだ」
アン「逆に言えば、魔法を“解体して再現可能にしたものが科学”」
レン「いい定義だな」
アン「でしょ。……でもその科学をどれだけ突き詰めても、最後は『宇宙が用意した定数』に従うしかないの」」
レン「それが……『なぜこの宇宙は、この法則で動いているのか』という問いか」
アン「そう。半導体の限界も、電磁波の性質も、私たちが設計したわけじゃない。宇宙の『仕様』を、スマホという形 に翻訳しただけよ」
レン「……美しいな。私たちが文明を築く前から、その魔法の種は世界に埋まっていたわけだ」
アン「……ふふ、でしょ」
科学を解き明かしても、「なぜ」は残り続ける――そこに魔法がある。
