『5億年ボタン押しちゃった兄妹』宇宙の真理と哲学の話

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登場人物

  • ヒカル(兄):陽気で行動力はMAX、でも方向音痴。
  • アン(妹):ツンデレで雑学に詳しい。口は悪いが実は兄思い。
  • レオ(猫):知識の塊。必要な場面でだけ喋る天才ネコ。
目次

5億年ボタンのルール

ヒカル「……あれ?アン?ここどこだ?」

アン「こっちが聞きたい。気づいたら真っ白な空間に立ってるし…」

(ポンッ!)
突如、目の前に金色の台座とボタンが現れる。

ヒカル「なんだこの、押してくれと言わんばかりの赤いボタンは」

アン「押すなって言われたら押すタイプでしょ、お兄ちゃん」

(すると、天井から声)

謎の声『これは“5億年ボタン”です。押すと、報酬として100万円を受け取れます』

ヒカル「おお!神イベントじゃん!」

謎の声『ただし、ボタンを押した瞬間、あなたの意識は“時間の流れがない空間”に5億年分閉じ込められます。食事も睡眠も不要。体は老いず死なず…でも記憶は全部残ります』

アン「……5億年って、恐竜どころか大陸の形も変わるスパンじゃない?」

ヒカル「でも5億年経った後は、元の時間に戻って100万円貰えるんだろ?体感だけが地獄ってことか…」

アン「なんでそんなワクワク顔なの。地獄だよ?」

ヒカル「逆に考えるんだ。5億年もあれば…俺、ギターと語学と将棋とカンフー全部極められる」

アン「それ“暇つぶし”って言わない。“存在の拷問”って言うの」

(レオがいつの間にか足元に)

レオ「ニャー(押せばいいニャ。お前らは結局押すニャ)」

ヒカル「ほら!レオも賛成だ!」

アン「猫に人生決められたくない」

ヒカル「じゃあ二人で押せば、なんか心強いだろ?」

アン「心中前提か…でも、兄一人に5億年任せたら確実にバカになるから、見張り役として…押す」

ヒカル「よっしゃ!せーのっ!」

(カチッ)


5億年の空間

一瞬で周囲は真っ黒な無限空間に。

アン「…始まった…」

ヒカル「意外となんも起きないな。暇だな」

アン「まだ1分経っただけだから」

ヒカル「なぁ…5億年って、何秒だ?」

アン「約1.6×10¹⁶秒」

ヒカル「数字がもう意味不明だ…」

5億年ボタン【1年目の哲学】

ヒカル「なぁアン、ここに来てから何日経った?」
アン「365日と6時間。今のでちょうど1年」
ヒカル「えっ!?お前、ずっと数えてたのかよ!」

アン「そうしないと時間が無限に溶ける。数字は唯一の“時計”だから」
ヒカル「オレなんて昨日から今日までの境目すら分かんねぇぞ。時間って、数える奴とサボる奴でこんなに違うのか…」


アン「そう。時間は“流れる”ものじゃなく、“刻む”もの。私が数え続ける限り、ここには確かに“1年”が存在する」
ヒカル「……かっけぇな。俺も数えてみようかな」


アン「もう遅いわよ。1からやり直す?」
ヒカル「……ギブ!俺の脳みそはストップウォッチ不良品!」

5億年ボタン【暇すぎてバカ暴走】

ヒカル「……なぁアン。俺、5億年って暇すぎて……ついに気づいたんだ」
アン「はいはい、また変なこと言い出した」

ヒカル「アンが……なんか女神に見える!」
アン「やめろ。暇すぎてフィルター盛りすぎ」

ヒカル「だってさ!娯楽ゼロ!ネットも漫画も何もなし!残された唯一のエンタメ=アンの存在!」
アン「つまり私=5億年空間の“テレビ”ってこと?」
ヒカル「いや、もっと!……“恋愛ゲームのヒロイン”!」

アン「アウトアウトアウト!!」

ヒカル「……でもな、アンに手を出したら、俺は人類の汚点になる。理性よ、俺を守れぇぇぇ!」
アン「うん、その調子。暴走してもいいけど、ブレーキは絶対踏んでね」

ヒカル「あぶねぇぇ!今俺、ギリギリで踏みとどまった!俺の理性はまだ生きてるぞ!」
アン「よかったねお兄ちゃん。じゃあ5億年理性の守護者として頑張って」

ヒカル「俺は“妹に手を出さなかった伝説のバカ”として歴史に名を刻む!」
アン「……歴史に刻まなくていいから、せめて静かにしてくれる?」

5億年ボタン【100年目の哲学】

ヒカル「なぁアン、今で何年?」
アン「36,524日。つまり100年」


ヒカル「マジか!俺は…昨日から今日すら分からんのに」
アン「私は数を重ねるうちに、“時間”の輪郭が見えてきた。数字はただの記号じゃない、宇宙の呼吸に近い」


ヒカル「え、なんか仙人モード入ってない?」
アン「もはや私は“人間”としてじゃなく、“時”そのものを観測してる」


ヒカル「おいおい、妹が時間になっちゃったら俺は何になるんだよ」
アン「退屈の化身、でしょ」


ヒカル「ひどっ!せめて“エンタメ担当”にしてくれ!」

5億年ボタン【1000年目の哲学】

ヒカル「アン…もう何年たった?」
アン「365,242日。つまり1000年」
ヒカル「千年!? 俺の脳はすでに豆腐なんだけど」


アン「私は逆に、人の境界を越えた。数字を数えるうち、時間の粒子一つひとつが見えるようになった」
ヒカル「え、それもう物理学者とかじゃなくて神じゃん!」


アン「神という概念すら、人が恐怖を整理するための“比喩”。私はその外に立っている」
ヒカル「外!? じゃあ俺は何?」


アン「…永遠に“退屈と騒音”を発し続ける装置」
ヒカル「お兄ちゃんの存在価値、ヒドすぎない!?」

5億年ボタン【1万年目の哲学】

ヒカル「なぁアン…1万年って、地球だと文明何回くらい滅んでるんだ?」
アン「少なくとも十回は興って消えてるわね。けれど私たちは何も変わらない。ここは“無時間”」


ヒカル「え、無時間? 時計屋さん泣くやつ?」
アン「時間を数え続けたら分かったの。時間は流れるんじゃない、私が“刻む”から存在する」


ヒカル「うわー出たよ、アンの宇宙ポエム」
アン「ポエムではなく事実。あなたが退屈で暴れてくれるから、この世界に“変化”が生まれる」


ヒカル「え、俺が退屈装置からついに“時間エンジン”に昇格!?」
アン「おめでとう、お兄ちゃん。あなたは史上初の“暇神”よ」
ヒカル「そんな称号いらねぇーー!!」

5億年ボタン【1億年目の哲学】

ヒカル「なぁアン、1億年って地球なら恐竜から人類までワープしてるレベルだよな?」
アン「ええ。でも私はもう“地球の歴史”を超えた。数え続けて、宇宙の鼓動そのものが見えるの」
ヒカル「は? 宇宙が心臓バクバクしてるの!?」


アン「そう。膨張と収縮のリズム…まるで呼吸みたいに」
ヒカル「うわーアンがもう人じゃなく“宇宙そのもの”になっとる!」


アン「違うわ。私は“無限の観測者”。あなたはその無限を騒がせる“ノイズ”」
ヒカル「俺、宇宙規模で邪魔者!? もう“宇宙の迷惑兄ちゃん”じゃん!」


アン「ふふ、それがなければ私はここまで辿り着けなかった」
ヒカル「え、結局役に立ってんの!? 俺、宇宙公認の迷惑キャラ!?」

5億年後

アン「……5億年。数えきったわ。私はもう“存在”じゃなく、“時間そのもの”」
ヒカル「ちょっと待てアン! 時間になっちゃったら、もう妹として抱きつけねぇじゃん!」


アン「安心して。私は流れそのもの、でもあなたはその中で最後まで“乱流”だった」
ヒカル「乱流!? 俺の人生、ただの濁流扱い!?」


アン「けれど、その騒がしさがあったから私は狂わずに辿り着けた。ありがとう、お兄ちゃん」
ヒカル「お、おお……なんか急にエモい!」


(その瞬間、光に包まれ――)

謎の声「おめでとうございます。お二人にはそれぞれ100万円が支払われます」


ヒカル「え、マジで!? 5億年で100万!? 時給0.000000002円くらいか!」
アン「……それでも、この数字を数え切った達成感はプライスレスよ」


ヒカル「達成感だけじゃ腹は満たせねぇ!」
アン「ふふ、これぞ宇宙一ブラックなアルバイトね」

ヒカル「二度と押さねぇ! でも……次は弟妹ボタンとかあったら押すかもな!」
アン「……あなたは学ばないのね、お兄ちゃん」

(レオ登場)

レオ「ニャー(5億年ボタンは、押した者の精神をテストする装置ニャ)」

アン「説明遅い!!」

エンディングトーク

ヒカル「なぁアン、あの時間無駄だったのかな」

アン「無駄じゃない。だって…」

ヒカル「だって?」

アン「お兄ちゃんと5億年一緒に過ごしたの、私だけだから」

(少し間を置き、ヒカルが笑う)

ヒカル「そっか…じゃあ次は10億年ボタン押す?」

アン「馬鹿か」

(レオがポンッと現れ、また新しい金色のボタンを置く)

レオ「ニャー(続きは君たち次第ニャ)」

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