熊撃退法【北海道マップ知床半島】熊出没の時に安全な緊急サバイバル術

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おすすめポイント

  • 日本の知床半島・カムイワッカ湯の滝で実際に起こり得る熊遭遇シーンをリアルに描写
  • 兄妹の緊張感あるやり取りで安全対策や遭遇時の行動をわかりやすく解説
  • 「熊から50メートル以上離れる」「背中を見せない」「刺激しない」など実践的ポイントを会話劇で学べる
  • アンの機転で熊を撃退するユニークな展開でエンタメ性を確保
  • 緊張感とユーモアを両立、読者が感情移入しやすい構成

登場人物紹介

  • ヒカル(27歳)
    お調子者で写真好き。熊の危険を甘く見て近づき、妹に叱られることも。
  • アン(14歳)
    ツッコミ役かつ冷静沈着。兄を守るため熊撃退の判断を下す。安全知識と行動力を持つ。
目次

第一幕:カムイワッカの黒い影 ―熊との遭遇―

(知床・カムイワッカ湯の滝。湯気が上がり、静かな自然の中に二人の声が響く。)

ヒカル「いや〜やっぱ北海道の大自然は格が違うな!空気もうまいし、写真撮るのに最高だ!」

アン「お兄ちゃん、はしゃぎすぎ。ここ、熊の生息地だって書いてあったでしょ?」

ヒカル「熊?あ〜、観光客用の脅しかなんかだろ。滝見に来て熊に会うとか、確率1%未満だって。」

アン「その1%を引くのがお兄ちゃんの運の悪さでしょ。」

(ヒカル、カメラを構えて歩きながらふと止まる。)

ヒカル「……おい、アン。あの黒いの……動いてない?」

(少し離れた林の中、黒い塊がぬっと立ち上がる。)

アン(目を細めて)「……お兄ちゃん、あれ、クマだよ。」

ヒカル「え、マジ?うわっ!本物!?でっか!やっば、これ撮らなきゃ!」

アン「ダメっ!!近づいちゃダメ!!」

ヒカル「でもチャンスは今しか――」

アン(低い声で遮る)「聞け、お兄ちゃん。熊には50メートル以上近づいちゃダメ。
そして――目を離さない。背中を見せない。走らない。刺激しない。
これ、全部“生き残るマニュアル”だから!」

ヒカル「いやいや、俺逃げ足速いし大丈夫だって!それに、ズーム効かないし!」

アン「命のズームは効かないの!距離感ミスったら、ニュースの見出しが“観光客、熊とツーショット(永眠)”になるわよ!」

ヒカル「だ、大げさすぎ――」

(熊、低く唸り声を上げる。)

ヒカル「……うわっ!こっち見た!?お、俺に興味あるっぽい!」

アン「“興味”じゃなくて“警戒”! 50メートルどころか30メートルよ!?それ、それ以上近づいちゃダメ!!」

ヒカル「お、落ち着け俺……写真だけ撮ってすぐ引く……すぐ……」

(熊がヒカルにゆっくり近づいてくる)

アン「動かないで!目を離さないで!熊ってね、逃げる背中を見た瞬間に“狩猟スイッチ”が入るの!」

ヒカル「だ、だって怖ぇよ!ムリだ!」

(ヒカル、耐えきれず反射的に背を向けて逃げ出す。)

アン「お兄ちゃんっ!!背中見せるなって言ったでしょ!!!」

(熊、咆哮を上げながらヒカルの後を追う。)

アン(歯を食いしばり)「……ほんっとにバカ……!
でも――“逃げたら終わる”のが熊相手。ここで私が止めなきゃ……!」

(アン、足元の枝を拾い、姿勢を低く構える。目に迷いはない。)

アン「……お兄ちゃん。次に私が怒るのは、“生き延びた後”だからね。」

(滝の音の中で、熊の足音が迫る――)

知識と覚悟 ―熊との真正面対決―

知床・カムイワッカ湯の滝。

ヒカル「うわあああっ!やっぱ無理!熊でけぇぇぇっ!!」

アン「お兄ちゃん、逃げちゃダメ!背中見せたら――!」

(ドンッ!ヒカル、岩につまずき転倒)

ヒカル「痛っ……やばい、近づいてくる……!!」

(熊が低い唸り声をあげながら、ヒカルへじりじりと接近)

アン「っ……仕方ない!」

(アン、地面に落ちていた石を拾い、熊の横方向に向かって全力で投げる。カンッと音が響く)

アン「こっちよ、クマさん!お兄ちゃんは餌じゃない!」

(熊が音のした方向に顔を向け、アンの方に注意を向ける)

ヒカル「おいアン!?危ないって!そっち行ったぞ!!」

アン「わかってる!けど、お兄ちゃんを食べられるよりマシ!」

(アン、体を大きく見せるように両腕を広げ、一歩前に出る)

アン「ポイントその1、“体を大きく見せる”! 熊は自分よりデカい相手を警戒するの!」

ヒカル(地面に這いながら)「今それ説明すんの!?実況してる暇ある!?」

アン「知識は生き残るための武器よ!」

(アン、熊から目を逸らさず、ゆっくりと後ずさる)

アン「熊は目を見てれば、簡単には襲ってこない。焦らないで、ゆっくり引く……。」

(熊が唸りながらも、アンの強気な態度に戸惑い始める)

ヒカル「アン!あいつ、こっち見てない!今が逃げ――」

アン「動くなってば!お兄ちゃんが動いたら全部無駄になる!」

(熊、アンの方へ警戒しながら近づく。アンの目は鋭く、低い声で『シッ!』と威圧)

アン「……いい子ね。私は怖くない、でも簡単にも食べられない相手よ。」

(熊が一瞬立ち止まり、鼻を鳴らす。その瞬間、アンが構えていた枝で熊の鼻先を一撃)

アン「今ッ!」

(熊が驚いてのけぞり、森の奥へ退散。沈黙――風だけが吹く)

ヒカル「……マジか……熊、逃げた……アン、すげぇ……。」

アン(息を整えながら)「怖かったけど……“知識”があれば、恐怖に勝てるのよ。」

ヒカル「……ごめん。言うこと聞かなくて。」

アン「もういい。生きてるから、説教はあとでできる。」

第三幕:知識の盾 ― アンの熊撃退講座

(森に静寂が戻る。ヒカルは地面に座り込み、荒い息を吐いている)

ヒカル「……お、終わった? 俺……まだ生きてる……? アン、どうやって……?」

アン「落ち着いて。熊はもう行ったわ。驚かせて追い払ったの。」

ヒカル「“驚かせた”って……お前、なんか投げてたよな?」

アン「うん。熊の“横”と“足元”に石を投げたの。
直接ぶつけたら逆効果。攻撃されたと思って逆上する可能性が高いからね。」

ヒカル「じゃあ、狙いは“当てる”じゃなくて“気をそらす”ってことか?」

アン「そう。熊は音や動きに敏感。だから少し離れた場所に“新しい敵”が現れたように見せたの。
その隙に「こうやって、自分を“巨大な存在”に見せる。
背筋を伸ばして、低い声で『シッ!』と威圧。熊は“弱い獲物”より“危ない敵”を避ける本能があるの。」

(アン、両手を大きく広げながら再現して見せる)

ヒカル「……マジで理詰めの戦いだったのか。
俺、写真撮ろうとして近づいて、背中見せて逃げて……“やっちゃいけない三連コンボ”してたな。」

アン「そう。熊に背中を見せるのは最悪。
動くもの=獲物ってインプットされてるから、逃げると本能で追ってくる。
だから目を離さず、ゆっくり後退するのが鉄則。」

ヒカル「じゃあ……あの枝で“鼻”を突いたのも、わざと?」

アン「そう。熊の鼻は急所。神経が集中してて、強烈な刺激を受けると本能的に距離を取るの。
もちろん、本当に最後の手段だけどね。」

ヒカル「……俺、熊よりお前が怖いわ。」

アン(にやり)「当然でしょ。熊は野生、私は“理性を持った野獣”よ。」

ヒカル「次に熊が出たら、頼むからガイドじゃなくボディガードで雇いたいわ……。」

(風が静かに吹き、森にようやく穏やかな空気が戻る)

第4幕:エンディングトーク ― ヒカルの反省とアンの説教

(知床の森を抜け、夕暮れの駐車場。ヒカルはまだ震えながら座り込む。アンは腕組みで立っている)

アン「……お兄ちゃん、今日の教訓、何だと思ってるの?」

ヒカル「うぅ……熊は危ない、ってことは分かった……。」

アン「違うわ。熊よりもまず、自分の無知と好奇心の暴走が一番危ないのよ!」

ヒカル「くっ……その通りです……。」

アン「例えば、50メートル以内に近づいたらどうなるか、背中を見せたらどうなるか、
体を大きく見せる意味、物を投げる角度まで、全部“生き残るための科学”なの。」

ヒカル「なるほど……“森の物理学”ってことですね……。」

アン「物理学って……。お兄ちゃん、ちょっと落ち着きなさい!
危険な状況で笑いを取ろうとするのやめなさい!」

ヒカル「はい……もう無茶はしません……。
熊も怖いけど、アンの怒りの方がもっと怖い……。」

アン「覚えておきなさい。知識と冷静さがあれば、どんな野生も相手にできるの。」

ヒカル「今日で僕の生存確率、ぐっと上がった気がします……。
今後は写真より安全を優先します。」

ヒカル「……今日で僕、やっと“生存確率”が上がった気がします。写真より安全第一、ですね。」

アン「ふふ、名言っぽいけど、当たり前よ。それが生き延びる秘訣。」

(暗転。END)

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